石楠花(シャクナゲ)の育て方

石楠花(主に日本野生種)の育て方
黄花開花大.JPG(画像をクイックすると拡大出来ます)
[キバナシャクナゲ]

 古くから日本石楠花は自根のまま栽培すると、すぐ枯れてしまう弱い花木の代表格のように言われておりますが、特性を良く理解し用土、水やり、置き(植え)場を工夫して栽培しますと、名古屋のような暑い都市部でも、冷涼な自生地よりも張りのある樹勢を維持し、実に健全に育てることが出来ます。

1.石楠花の特性
 (1) 冷涼なる山地に自生する石楠花を温暖な都市部へ移植し、夏季 気温が30℃くらいを越えると、 枝・幹・葉は問題ありませんが、地下の根は自生地の2〜3倍の酸素を消費し相応の二酸化素を排出します、これが根の付近に充満し酸素の供給が途絶えると、根の先の細胞が壊死してしまい、水や養分の吸収が出来なくなり石楠花は枯れてしまいます。
 (2) 石楠花の根は弱酸性土壌を好みます。 [PH(水素イオン濃度)7.0〜7.1が中性、PH6.0以下が弱酸性] 特に日本石楠花はPH5.0〜5.5と酸性度がやや高い用土を好みます。赤玉土や鹿沼土のような微酸性(PH6.8くらい)の土壌では、冷涼な地域外での栽培は大変難しいようです。

2.石楠花の植え方
 ・植え付け適期は根が活動し始める2〜3月と枝葉の成長がおさまった10〜11月です。ただし、黄花石楠花等高山性で特に暑さに弱い石楠花は春植えはやめましょう。(これは植え付け時根を傷め、十分回復しないまま猛暑を迎えなければならないからです)
 
 
 鉢植え
鉢植え図.jpg (図の部分をクイックすると拡大できます)

(1)鉢
 鉢は、プラスチック製よりも素焼きの駄鉢、駄鉢より木鉢、木鉢より石鉢(浅間石や軽石で作った鉢)の方が適しています。(断熱性に優れている)
 大きさは、なるべく大きめのものを使用します。
 これは保水性を高めることと、根の温度を外気温より低めに保つのに有利だからです。   
 特に黄花石楠花のような高山植物は、上図のように、底面全体を防虫ネットで空間を作るようにして区切り(これを二重底と呼んでいます)根への通気性を高めた植え方をします。

(2)用土
 火山性硬質土(浅間砂・蝦夷砂・日向土等)+ピートモスを使用します。
 配分は体積比でピートモスを多くても5%程度とします。
 硬質土は単品よりも複数の混合の方が良いでしょう。また小粒の物は十分微塵を取り除いて使用します。
 *鹿沼土の様に軟らかいものは経年により目詰まりし易いので、気温の高い地域での使用はお勧めできません。
 *ピートモスは土の酸性を高め(ピートモスのPH(ペーハー)は4程度です)発根を促す働きが有りますが2〜3年で腐敗します。あまり多く使用しますと腐敗時 根に悪影響を与えます。
(3)石楠花の根処理
 植付ける石楠花の根についている用土は、竹串などでなるべく落としてから植付けます。(細かな黒土やピートモスが根の周りに多く残っていると、水を停滞しやすくする等で根腐れしやすくなります。)


 地植え
地植え図.jpg(図の部分をクイックすると拡大できます)

(1)植え方
 上図のように石で鉢を作るようにして、高植えします。特に高山系(北方系)の石楠花は、一般の庭木のように穴を掘って深植えしますと、根が呼吸できなくなり枯れてしまいます。
 これは、高山植物を庭植えするのに「ロックガーデン」が良いと言われているように、地中深くまで空気が通ると、根も地中深くまで張ることが出来ます、土の中は深ければ深い程温度が低く一定しているため、外気温が35℃を超える真夏でも、根の周りは温度上昇しないからです。
 根についている土は鉢植えする時ほど落とす必要はありません(地植えの場合は鉢植えほど潅水の必要がないので)

(2)用土
 出来れば、鉢植えと同じような火山性の硬質土が最適ですが、用土が多くなるとかなり費用が高くなってしまいます。耐暑性が比較的強い石楠花(筑紫・隠岐・屋久島等)の場合は荒めの山砂でも良いでしょう。
 地植えの場合は保水性を高めるための腐葉土を1〜2割まぜ、酸度を高め発根を促すためピートモスを5%程度混ぜます。

 [注:ピートモス、腐葉土は本来酸性ですが、園芸店で市販されている物の多くが草花栽培用に酸度更正(中和剤等で中性化)してあるので注意してください。]
・鉢植え、地植え、いずれも酸性の用土で通気性、保水性共に良く植え込むことが大切です。

3.置き(植付け)場所
・日本石楠花は高山性で耐暑性が弱いものが多いため特に夏越しの対策が大切です。
 (1) 冬は太陽光が十分あたり、夏は午前中に太陽光があたり昼前から日陰となるような大きな樹木の根元付近が最適ですが、このような場所がない場合は、夏(最高気温が25℃程度)になれば遮光ネット、ヨジズ等で日陰(遮光率60%程度が目安)にして理想に近い環境をつくります。

 (2) 風がよく通る涼しい場所が適しています、遮光時は風を遮断しないよう注意しましょう。

 (3) 植物は移動(光を受ける方向が頻繁に変わる)を嫌います。季節ごとに条件の良い場所へ鉢を移すことは返って悪影響を与えるのでやめましょう。(移動が必要な場合は鉢に方角の印を付け、東西南北を変えないように置きましょう。)


4.水やり
・石楠花は浅根性のため乾燥にはあまり強くありません、通気(通水)性良く植えて水切れしないよう管理する事が大切です。

 (1) 春:花や新芽を伸ばす大切な時期で、根は盛んに呼吸しています。特に鉢植えのものには鉢土内の空気の交換を兼ねて毎朝たっぷりと水を与えましょう。

 (2) 夏:日本石楠花は暑さを嫌います、特に根が蒸れると致命的です。梅雨明け頃から秋にかけては日没後(夜間)に行います。
 これは、朝あまり早くない時間に水やりをすると気温が上昇する9時10時ごろまで水分が残ってしまい、根を蒸らしてしまう恐れがあるからで、夜間(夕方)の水やりは高温になった鉢(根)の温度を効率よく冷やせるからです。
 棚上の鉢の場合は棚下の地面にもたっぷりと水をまきます。これは気化熱で鉢(根)の温度を下げると同時に、水蒸気が葉面付近の湿度を上げてくれるからです。
  昼夜の温度差をつけることは石楠花栽培に大切な要素です。

 (3) 秋:涼しくなってくるので水やりは朝でも夜でもかまいませんが、夏に延びた新芽の先につぼみが付き、しだいに膨らんできます、この時期に用土を極端に乾燥させるとつぼみを枯らしてしまいます。春先ほどの水は必要ありませんが乾燥には注意が必要です。

 (4) 冬:石楠花は休眠期に入り、それほど水を欲しがりませんが、冬の寒風は思いのほか乾燥を進めます、暖かい日の午前中に水を与えます。


5.施肥
・施肥は石楠花の成長、開花にとても重要ですが、肥料の与えすぎで枯らすことはあっても肥料不足で枯れることは大変まれです、特に植付けして根が落ち着くまでの1ヶ月間と、暑さで根が弱る夏の施肥はやめましょう。

 (1) 春:開花や新芽を展開する3月から梅雨が始まる6月までは特に肥料分を必要とします、最初、根が活動を始める2〜3月に固形肥料(暖効性のもの)を根の廻りに少量まきます。続いて開花後、お礼肥えを与えます、これにはリン酸分を多めに含む液肥を、規定より多めの水で薄め施す(1週間に2〜3回程度)と良いでしょう。(開花後に暖効性の固形肥料を多く与えると、暑さで根が弱る夏季まで肥料分が残ってしまうからです。また、花が終わってから伸びる新芽の先に来春の蕾を付けさせるためには、リン酸分を多く含む肥料が効果的です。)

 (2) 夏:肥料は与えません。鉢植えの石楠花で、梅雨に入っても根のまわりに固形肥料が残っていればこれを取り除き、暑さで弱る根に肥料があたらないようにします。

 (3) 秋:9月下旬頃から施肥を再開します。秋の肥料は夏季に付いた蕾を充実させるのに大切な肥料です。この時期の施肥は枝葉えお成長させるチッ素分が少なく、花、実を充実させるリン酸分を多く含む肥料を与えます。

 (4) 冬:石楠花は休眠期に入ります、施肥は行いません。

6.その他の管理
 (1) 害虫の予防
 ・春:新芽がのびだした頃・新梢の成長が止まった頃の2回殺虫剤を散布。
 ・秋:来春の花芽や新芽が固まった10月頃にも殺虫剤を散布します。
 ・冬:休眠中の1月頃カイガラムシの防除に機械油乳剤等を散布します。
  特に秋に花芽(蕾)の中に害虫が入りやすいので注意しましょう。

 (2) 花がらつみ 
・花の散ったすぐ後に花がらは摘み取ります。(種を実らせるためにたくさんのエネルギーを消費し木の生長を妨げるからです。)

 (3) 摘蕾      
・石楠花を植替えした翌年等はたくさんの花芽(蕾)をつけることがありますが、その全てを開花させることは木には大きな負担となります。休眠期の1〜2月に4〜5本の枝先に1個程度に摘蕾します。

 (4) 芽摘み    
・石楠花の整枝は剪定では行いません、芽摘みで行います。
これは日本石楠花のほとんどが胴吹き芽を出さないためです。枝先に新芽が一つだけ付いている箇所の枝数を増やしたい場合は、4〜5月に新芽が2〜3cm伸びて来た時に欠き取ります 。
   そうすると葉の付け根から2番芽が2〜3個発芽してきます、これを成長させ枝数を増やして行きます。ただし2番芽には花芽を付け難いのでご理解ください。(石楠花の花芽は枝先から1本伸びた充実した新芽の先に付け易いのです。)